今日は熱がある。食欲もない。
そういう日に、何を出せばいいのか。
無理にでも食べさせたほうがいいのか。食べないまま寝かせていいのか。
判断に迷う場面だと思います。
この記事では、体調を崩した日の食事の考え方を書きます。
最初に ── 受診の判断が先です
食事の話をする前に、線を引いておきます。
次のような場合は、食事を工夫する場面ではありません。連絡してください。
- 熱が続いている
- 呼びかけへの反応が、普段と違う
- 呼吸が速い、苦しそう
- 丸一日、水分がほとんど摂れていない
- ぐったりして動けない
- むせたあとに熱が出た(むせたときの記事)
高齢の方は、はっきりした症状が出ないまま、体調が変わっていることがあります。
「食欲がないだけ」と判断しないでください。 それは、医療者が診て決めることです。
この記事は、受診の判断がついたうえで、家で食事をどうするかの話です。
優先順位は、はっきりしています
体調を崩した日は、全部を満たそうとしないでください。
順番はこうです。
1. 水分
2. エネルギー(何でもいいから口に入るもの)
3. 栄養バランス
3は、後回しでいいです。
熱がある日にバランスの取れた献立を作っても、食べられません。まず1と2です。
「今日は野菜が摂れていない」と気にする日ではありません。数日単位で戻せば十分です。
まずは水分です
熱があるときは、普段より水分が失われます。
水分の記事に書いたことが、そのまま効きます。
- 一口を、回数多く
- 冷たいものは入りやすい(ゼリー、シャーベット状のもの、果物)
- 温かいものも(白湯、汁物)
- 手の届くところに置く
ただし、水分制限の指示が出ている場合は、その指示が優先です。 ここは変わりません。
そして、飲めていないなら、それ自体が連絡する理由になります。 家庭で粘る話ではありません。
食べられる形にする
食欲がない日は、「食べやすさ」だけで選んでください。
入りやすいもの
- 冷たくてなめらかなもの(ゼリー、プリン、アイス、ヨーグルト)
- のどごしのいいもの(茶碗蒸し、豆腐、卵とじ)
- 汁物(水分とエネルギーが同時に入ります)
- 果物(水分が多いもの)
- 粥、雑炊(ごはん・パン・麺の記事)
冷たいものが入りやすいのは、熱があるときの特徴です。
間食とおやつの記事に書いたとおり、おやつだけになっても構いません。 口から入っていて、その分のエネルギーが入っているなら、条件は満たしています。
においを立てない
これは、調理側の実感です。
食欲がないとき、強いにおいはつらいです。 揚げ物、脂の多いもの、においの強い香辛料。
さっぱりしたもの、においの少ないものにしてください。
温かいものは、少し冷ましてから出すと、においが立ちにくくなります。
量を減らして出す
皿に山盛りだと、それだけで食べる気が失せます。
退院後1週間の記事に書いたとおり、小さい器に、少しだけ。 足りなければ足せばいい、という出し方にしてください。
無理に食べさせないでください
ここは、はっきり書きます。
体調が悪い日に、無理に食べさせないでください。
食べられなくなったときの記事に書いたとおり、食べる力が落ちているときに無理に進めると、負担になります。 飲み込みきれずに口に残り、気管に入ってしまうことがあります。
熱があるとき、体力が落ちているときは、飲み込む力も普段どおりではありません。
いつもは食べられているものでも、その日はむせることがあります。
病棟では、どうしていたか
ここは、意外に思われるかもしれません。
熱があるだけなら、いつも通りの食事を出していました
食事の形を変えることは、していませんでした。
熱があるからといって、やわらかくしたり、刻んだりはしません。いつもと同じ食事を、いつも通りお出しします。
これは、このサイトの考え方と同じです。
1日の献立の記事に書いたとおり、いちばんの理想は、これまでと同じものが同じ形で食べられることです。 体調を崩した日だからといって、そこを崩す必要はありません。
きざみ食の記事や形態は誰が決めるのかの記事で書いてきた「安易に形態を変えない」も、ここで効いてきます。
変えるのは、形ではなく量です。 食べられる分だけ食べてもらう。
そのうえで、「冷たいものなら食べられるか」を聞いていました
いつも通りの食事を出して、それでも進まないとき。
本人に聞いていました。 アイスやゼリーなど、冷たいデザートだけなら食べられそうか。
食べられそうだと言われれば、それを召し上がっていただく。
ここで大事なのは、こちらが決めて出すのではなく、聞いているということです。本人にどう伝えるかの記事に書いたとおりです。
体調が悪い日ほど、本人にしか分からないことがあります。 何なら入りそうか。それは聞かないと分かりません。
ご家庭でも、同じ順番で
- まず、いつも通りの食事を出す(形は変えない)
- 進まなければ、「冷たいものなら食べられそう?」と聞く
- 食べられると言ったものを出す
- 量は、本人に任せる
間食とおやつの記事に書いたとおり、おやつだけになっても構いません。 口から入っていれば、条件は満たしています。
何日続いたら動くか
ここが、いちばん知りたいところだと思います。
病棟では、3〜4日、3食すべて食べられない状態が続いたときに、医師に相談していました。
そこで点滴の内容を調整するなど、食事以外で補う方法を検討します。
ご家庭では、もっと早く動いてください
病院は、毎日医師と看護師が見ている場所です。その環境で3〜4日です。
家庭には、その体制がありません。ですから、
- 2日続けて、ほとんど食べられていない
- 水分も入っていない
- この記事の冒頭に書いた様子がある
このどれかがあれば、連絡してください。 様子を見て粘る場面ではありません。
「何日まで様子を見ていいか」を自分で決めないでください。 それは医療者が判断することです。
回復してきたら
食べられるようになってきても、やることは同じです。
いつも通りの食事を出して、無理せず、食べられる分だけ食べてもらう。
病棟でも、そうしていました。「回復したから、しっかり食べましょう」と量を求めることはしません。戻るときも、本人のペースです。
ただし、ひとつだけ見ておいてください。
数日食べていなかったあとは、食べる動作そのものが鈍っていることがあります(入院で落ちるものの記事)。むせが出ていないかは、いつもより気をつけて見てください。
そして、回復のきっかけは、食べたいものです。
食べられなくなったときの記事に書いたとおり、好きだったものを出せるのは家庭だけです。何日か食べられなかったあと、「これなら食べたい」というものが、再開の入口になります。
熱が下がったあとも、見ておくこと
- 食べる量が、元に戻ってきているか
- むせが増えていないか
- 体重が落ちていないか
- ぐったりしていないか
熱が下がっても、食べる量が戻らない場合は、相談してください。
体調を崩したことをきっかけに、そのまま食べる量が戻らなくなることがあります。入院で落ちるものの記事で書いた「動かない期間で落ちる」のと、同じことが起こります。
「治ったのに、前ほど食べない」は、放っておかないでください。
まとめ
- 受診の判断が先です。 熱が続く/反応が違う/水分が摂れていないときは連絡を
- 優先順位は 水分 → エネルギー → 栄養バランス。 バランスは後回しでいい
- 冷たくてなめらかなものが入りやすい
- においを立てない。 少し冷ましてから出す
- 小さい器に、少しだけ
- 無理に食べさせない
- 形は変えない。 熱があるだけなら、いつも通りの食事を出す。変えるのは量です
- 進まなければ「冷たいものなら食べられそう?」と聞く。 こちらで決めない
- 病棟でも、3〜4日食べられなければ医師に相談。 家庭なら2日で連絡を
- 回復してきても、いつも通りの食事で、食べられる分だけ。 ただしむせには注意
- 熱が下がっても量が戻らないなら、相談を
体調を崩した日は、食べさせることより、まず水分と、安全です。
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この記事を書いた人
調理師の資格が取れる高校を卒業後、看護師として病院に勤務。集中治療室(ICU)を経て、再び食の世界へ。医療と調理の両方の現場から、家庭でできる療養食のことを書いています。
看護師/調理師/食育インストラクター/野菜ソムリエ
