食事の量が減ってきた。3食では、明らかに足りていない。
そういうとき、無理に一食の量を増やそうとしないでください。
食べられる量には限りがあります。一度に入る量が減っているなら、回数を増やすほうが確実です。
そして間食には、もうひとつの役割があります。楽しみです。
この記事では、間食をどう使うかを書きます。
病院でも、間食を出していました
おやつは、家庭だけの習慣ではありません。
食事だけでは足りない方には、間食を追加していました。 甘いもの、ゼリー、栄養を補うための飲みもの。医師や栄養士と相談したうえで出します。
つまり、間食は栄養を補う正式な手段のひとつです。 「食事をちゃんと食べないからおやつはだめ」という考え方は、ここでは当てはまりません。
食事に時間がかかるときの記事でも書きましたが、大事なのは「1食で完食したか」ではなく、「1日でどれだけ入ったか」です。
間食のいちばんの強みは、食べてもらえること
食事は食べないのに、デザートは食べる。 これはよくあることです。
食べられなくなったときの記事で書いたとおり、病棟でもデザートだけ、ジュースだけということはありました。 そしてそれを、きちんと喜んでいました。
理由はいくつかあります。
- 甘いものは、味覚が変わっても感じやすい
- 冷たくてなめらかなものは、のどごしがよく、疲れにくい
- 量が少ないので、食べきれる
- そして何より、「食べなければいけないもの」ではない
食事は義務になりやすく、おやつは義務になりません。 この差は、思っているより大きいです。
何を出すか ── 食べやすさで選ぶ
食べやすいもの
- プリン、ババロア、ムース(なめらかで、まとまりがある)
- ゼリー(ただし後述の注意あり)
- 茶碗蒸し(甘くないおやつとして。たんぱく質も入ります)
- ヨーグルト
- アイスクリーム、シャーベット(口の中を湿らせる役割も)
- やわらかく煮た果物(りんごのコンポート、洋梨など)
- かぼちゃやさつまいもを裏ごししたもの
- 甘酒(量は控えめに)
冷たいものは、食欲がないときでも入りやすいです。夏場は特に。
和菓子と洋菓子
調理の側から、少し書いておきます。
和菓子は、意外と食べにくいものが多いです。
餡は問題ありませんが、餅や団子、求肥は危険です。 喉に張りつきます。最中の皮も、上あごに張りつきます。
一方で、水ようかん、葛きり、葛餅(本葛のもの)は、なめらかでまとまりがあります。 出汁とあんかけの記事で書いた葛の性質が、そのまま活きます。
洋菓子は、水分と脂肪分が多いものが食べやすい傾向です。プリン、ムース、生クリームを使ったもの。
逆に食べにくいのは、パサつくものです。 クッキー、カステラ、スポンジだけのケーキ、どら焼きの皮。これらは口の中の水分を奪います。
カステラは、牛乳に浸すと食べやすくなります。 水分と一緒にすると、パサつきが消えます。
危ないもの
絶対に避けてほしいものがあります。
- 餅(ごはん・パン・麺の記事にも書きました。詰まります)
- 団子、白玉
- こんにゃくゼリー(弾力が強く、噛み切れません)
- ナッツ類、豆菓子(細かく硬く、気管に入りやすい)
- 飴(口の中で移動します。むせやすい方には特に)
- せんべい、おかき(硬く、割れた破片が刺さることがあります)
「小さいから大丈夫」とは限りません。 小さいものほど、気づかないうちに気管に入ることがあります。
ゼリーの注意
水分の記事でも書きましたが、ゼリーなら安全とは限りません。
口の中でばらけるタイプのゼリーは、かえって飲み込みにくいことがあります。 まとまりが保たれるものを選んでください。
いつ出すか
疲れていない時間に
食事に時間がかかるときの記事で書いたとおり、リハビリや入浴のあとは疲れています。
間食は、本人に余力がある時間に出してください。午前中の落ち着いた時間、あるいは午後の早い時間。
食事に響かせない
食事の直前に出すと、食事が入らなくなります。
食事と食事の、ちょうど間くらい。目安としては、食事の2時間前までに済ませると響きにくくなります。
ただし、逆の使い方もあります
食事がまったく進まない方の場合、「食事に響くかどうか」を気にしすぎないでください。
3食にこだわらず、入るときに入れる。 1日の合計で見る。この考え方のほうが、実際には合っていることがあります。
水分も一緒に摂れます
間食は、水分を摂る機会でもあります。
- ゼリー、プリン、ヨーグルト
- お茶と一緒に出す
- アイス、シャーベット
水分の記事で書いた「動いたあとに一口」と同じで、おやつの時間を、水分を摂る時間として使えます。
「お茶にしましょう」という声かけは、「水を飲んでください」より自然に通ります。
楽しみとしての間食
ここからが、この記事で本当に書きたいことです。
好きだったものを
その人が昔から好きだったもの。 それを出せるのは、家庭だけです。
病院では選べません。食べられなくなったときの記事で書いたとおり、味も内容も管理されています。
家庭は違います。 好きだった和菓子屋のもの、若い頃によく食べていたもの、季節のもの。
食べやすい形にする工夫は、この記事に書いたとおりです。 好きなものを、食べられる形にして出す。これは家族にしかできません。
一緒に食べてください
これが、いちばん効きます。
おやつは、食事より一緒にしやすいです。食事の時間は合わなくても、お茶の時間なら合わせられます。
食事の姿勢の記事で書いたとおり、誰かと食べる時間には意味があります。 そしておやつの時間は、介助する側にとっても休憩になります。
「今日は何にする?」と聞いてください
選んでもらうこと自体に、意味があります。
食事は出されるものですが、おやつは選べます。食べられなくなったときの記事で書いた「献立を前もって伝える」と同じで、選ぶ・待つという時間が、食べる気持ちを作ります。
病棟での間食は、こうなっていました
医師の判断のもとで出していました
まず、ここははっきり書いておきます。
間食は、おやつだから自由に出していい、というものではありませんでした。 医師の判断のもとで提供していました。
食事と同じ扱いです。誰にでも出していたわけではありません。
ご家庭でも、制限の指示が出ている方の場合は、間食も指示の範囲に入ります。 勝手に増やしていいものではない、と考えてください。
種類は、3つありました
出していたのは、この3つです。
- おかず
- 高カロリーのゼリー
- アイス
ここで気づいてほしいのが、いちばん上です。
間食=甘いもの、ではありません。
おかずが、間食として出ていました。食事の時間に食べきれない分を、別の時間に回すという考え方です。
これは、家庭でもそのまま使えます
食事に時間がかかるときの記事で「主食と主菜だけ先に食べてもらい、残りは間食の時間に回す」と書きました。
病院でやっていたのも、これです。
おやつの時間に、甘いものを出さなければいけないわけではありません。昼に残した煮物を、3時に出してもいい。 量が入らない方には、こちらのほうが確実です。
「間食」という言葉に引っ張られないでください。
家族の持ち込みは、状態によります
これは、知っておいてほしいことです。
ご家族が持ってきたものを食べていただけるのは、ほぼご自分で生活できるくらいの状態の方だけでした。
それ以外の方は、
- 飲み込みの状態に合わないことがある
- 食事や水分の制限が出ていることがある
- 検査や治療の予定が関わることがある
だから、必ず確認していました。
入院中に家族ができることの記事にも書きましたが、差し入れの前に一声かけてください。 よかれと思って持っていったものが、危ないことがあります。
そして、家に帰ってからも考え方は同じです。
「もう家だから自由に」ではなく、飲み込みの状態に合うかどうかは、変わっていません。 特にこの記事の前半で挙げた危ないものは、家でも同じです。
「おやつだけ食べる」のは、悪いことではありません
ここが、いちばんお伝えしたいことです。
実際に、そういう方は珍しくありませんでした
食事はほとんど食べないのに、高カロリーのゼリーやアイスなら食べる。
そういう方は、全然おられました。
そのとき、何を見ていたか
見ていたのは、この2つです。
1. まずは、口から摂れているかどうか
体を治していくうえでも、口から入ること自体に意味があります。 何を食べたかより前に、まず口から入っているか。
2. 1日に必要な量が確保できているかどうか
一食ごとではなく、1日単位で見ます。
だから、「おやつだけ」は悪いことではありません
この2つから見れば、おやつだけ食べていることは、悪いことではありません。
- 口から摂れている
- その分のエネルギーが入っている
条件は満たしています。
「ごはんを食べないなら、おやつもなし」
食べる量が落ちている時期に、この考え方は当てはまりません。 むしろ、入るものが減るだけです。
ただし、区別はしてください
念のため書いておきます。
これは、食べる量が落ちている方の話です。
食事はきちんと食べられているのに、甘いものでお腹がいっぱいになって食事が入らない、というのは別の問題です。そこは分けて考えてください。
そして、制限の指示が出ている場合は、その指示が優先です。
栄養補助食品について
少量で栄養が摂れるように作られた、ドリンクやゼリーがあります。ドラッグストアで買えます。
便利なものですが、注意があります。
市販品の選び方の記事でも書きましたが、これを食事の代わりにするかどうかは、自己判断で決めないでください。
「食べないから、とりあえずこれで」という使い方を続けると、食べられていない状態が見えにくくなります。
体重が減っている、食事量が明らかに落ちている。そういう状態なら、まず相談してください。 そのうえで、必要なら勧められます。
補助として使う分には、便利なものです。 使うなと言っているわけではありません。判断を自分たちだけでしない、という話です。
注意すること
甘いものの量
糖尿病などで指示が出ている場合は、その指示に従ってください。 この記事の内容より優先されます。
指示がない場合でも、間食だけでお腹がいっぱいになると、食事が入らなくなります。 バランスは見てください。
むせやすい方は、形態を確認する
おやつにも、形態の考え方は同じように当てはまります。 食事でとろみが必要なら、飲みものにも必要です。
「おやつだから」と例外にしないでください。
食べたあとも、口の中を見る
口を整える記事で書いたとおりです。甘いものは口の中に残りやすいです。食後と同じように、口の中を確認してください。
まとめ
- 間食は、栄養を補う正式な手段。 病院でも、医師の判断のもとで出しています
- 1食での完食ではなく、1日の合計で見る
- 間食=甘いもの、ではありません。 おかずを間食の時間に回していい
- 「おやつだけ食べる」のは悪いことではありません。 口から摂れていて、その分が入っているなら条件は満たしています
- ただし、食べる量が落ちている方の話です。 制限の指示があれば、それが優先
- 食事は義務、おやつは義務にならない。 だから食べてもらえます
- 食べやすいのは、なめらかで、まとまりがあるもの
- 餅・団子・ナッツ・飴・せんべいは避ける
- カステラなどパサつくものは、牛乳に浸す
- 疲れていない時間に。 食事の2時間前までを目安に
- 水分を摂る機会としても使える
- 好きだったものを出せるのは、家庭だけ
- 一緒に食べる。 「今日は何にする?」と聞く
- 栄養補助食品は、食事の代わりにするかを自己判断しない
足りない分を補うためだけの間食なら、続きません。
楽しみとして出してください。 そのほうが、結果的に入ります。
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この記事を書いた人
調理師の資格が取れる高校を卒業後、看護師として病院に勤務。集中治療室(ICU)を経て、再び食の世界へ。医療と調理の両方の現場から、家庭でできる療養食のことを書いています。
看護師/調理師/食育インストラクター/野菜ソムリエ
