おかずは食べている。でも、ごはんが進まない。
パンを出したら、口に入れたまま止まってしまった。うどんは、すすったときにむせた。
主食は、毎食必ず出るものです。ここが食べにくくなると、一日の摂取量がまとめて落ちます。
そして主食は、おかずと違って「代わりに別のものを」がやりにくい。ごはんが食べられないなら、何を出せばいいのか。
この記事では、ごはん・パン・麺それぞれの、食べにくさの正体と対処を書きます。調理の側から書ける部分が、いちばん多い回です。
主食が食べにくい理由は、3つに分かれます
まず、どれで困っているかを見分けてください。対処がまったく違います。
1. パサつく(水分が足りない)
固めに炊いたごはん、時間が経ったパン。口の中の水分を奪うものです。
唾液が少なくなっている方には、これが最もつらい。噛んでもまとまらず、喉に送れません。
2. ばらける(まとまらない)
粒が口の中で散る。ごはんの最大の弱点がこれです。
一粒ずつになって口の中に散らばると、飲み込むためにまとめ直す作業が必要になります。この作業に時間と力が要ります。
3. べたつく・張りつく
やわらかすぎるパンや餅は、上あごや喉に張りつきます。やわらかい=安全ではありません。 ここは重要なので後で詳しく書きます。
ごはん
まず、水加減を変えてください
いちばん簡単で、いちばん効く方法です。
やわらかめに炊く。 水を少し多めにして炊くだけで、粒がほぐれにくくなり、まとまりやすくなります。
段階としては、こう考えてください。
- 軟飯(やわらかめのごはん)
- 全粥
- 五分粥、三分粥
- ミキサーにかけたもの
いきなり下げないでください。 きざみ食の記事で書いたとおり、必要以上に形態を下げると、食べる力そのものを使わなくなります。
まずは軟飯から試す。それで食べられるなら、粥にする必要はありません。
家族と別に炊くのが面倒なとき
これが現実的な問題です。毎食、本人の分だけ別に炊くのは続きません。
やり方はいくつかあります。
- 炊いたごはんに湯を少し混ぜて、ラップをして数分蒸らす(いちばん手軽)
- 一食分ずつ冷凍しておく(軟飯をまとめて炊いて小分け)
- 耐熱容器でレンジ粥にする(ごはんと水を入れて加熱)
まとめて作って冷凍が、結局いちばん楽です。 一食分ずつ平らにして冷凍すれば、解凍も早い。
粥が嫌がられるとき
「病人食みたいで嫌だ」と言われることがあります。これは味と見た目の問題であって、形態の問題ではありません。
粥は水で炊くと、味が薄く、ぼんやりします。そこで、
- 出汁で炊く(いちばん効きます。うま味が入るだけで別物になります)
- 卵を落とす(卵粥。栄養も入ります)
- 小さく刻んだ具を混ぜる(鶏、白身魚、青菜)
- 梅干しや佃煮を少しだけ添える(塩分の指示の範囲で)
出汁で炊いた粥は、白粥とは別の食べものです。 一度やってみてください。
ばらけるなら、まとめる
粥にしなくても、ばらけ対策はできます。
- あんをかける(出汁とあんかけの記事の技術がそのまま使えます)
- とろみのある汁と一緒に食べてもらう
- 卵でとじる(親子丼、他人丼、玉子とじ丼)
- 炊き込みごはんにする(具の水分と油分でまとまります)
丼ものは、実はまとまりやすい料理です。 具の汁がごはんに絡むためです。
お茶漬けは、勧めません
ここは注意してください。
お茶漬けは食べやすそうに見えますが、水分と固形物が口の中で分離します。 水はすぐ喉に流れ、ごはん粒が口に残る。
むせやすい方には、最も危ない組み合わせのひとつです。最初に見るべき3つのことで書いた「水は飲めても固形はむせる」という話と同じ理屈です。
同じことをしたいなら、雑炊にしてください。 ごはんと汁を一緒に煮て、全体をなじませる。分離しなくなります。
パン
パンが難しい理由
パンは、口の中の水分を大量に奪います。 そして噛んでいるうちに、団子状に固まっていく。
食パンの耳、フランスパン、クロワッサンの層。これらは食べにくさの代表です。
対処
- 牛乳やスープに浸す(フレンチトースト、パン粥)
- 耳を落とす
- サンドイッチにして、具の水分でしっとりさせる
- 蒸しパンにする(水分が多く、ほぐれやすい)
フレンチトーストは、療養食としてかなり優秀です。 卵と牛乳で水分と栄養が入り、やわらかく、しかも「病人食」に見えません。甘みがあるので、食欲が落ちているときにも入りやすい。
注意点
浸したパンでも、噛んでいるうちに口の中でひとかたまりになることがあります。一口の大きさを小さくしてください。
麺
麺は、すするから難しい
麺類の危険は、すする動作にあります。
すするとき、息を吸いながら食べています。その瞬間に、麺や汁が気管に入りやすい。 ラーメンやうどんでむせる方が多いのは、このためです。
対処
まず、すすらせないことです。
- 短く切る(2〜3cmに。箸で持ち上げてそのまま口へ運べる長さ)
- れんげやスプーンで食べてもらう
- 汁と一緒にすすらない(汁は別に飲む、または汁にとろみをつける)
短く切るだけで、かなり変わります。 キッチンばさみで茹でた後に切るのがいちばん早い。
麺の種類で選ぶ
- うどん:やわらかく煮れば食べやすい。煮込みうどんが最適です
- そうめん:細いのでまとまりにくく、意外と食べにくい。短く切る前提で
- そば:切れやすく、口の中でばらけます。 難しいほうです
- パスタ:噛み切りにくい。ソースが絡むのは利点
煮込みうどんは、療養食としてとてもよくできています。 汁にとろみがつき、具が煮えてやわらかく、全体がまとまる。
汁は一緒に飲まない
麺と汁を同時に口に入れると、固形と液体が分離します。 ごはんとお茶漬けの話と同じです。
麺を食べ、飲み込み、それから汁を飲む。順番を分けるだけで、むせにくくなります。
とろみをつけた汁で煮込むと、この分離が起きにくくなります。
主食が減るときは、量を見てください
主食は、一日の摂取量のいちばん大きな部分です。
おかずをしっかり食べていても、ごはんが半分になっていれば、全体ではかなり減っています。ここは見落とされがちです。
「おかずは食べているから大丈夫」と思っているうちに、体重が落ちていくことがあります。主食の量を、一度きちんと見てください。
減っているなら、
- 食べやすい形にする(この記事の方法)
- 回数を分ける(食事に時間がかかるとき:一度に全部を目指さない)
- 主食以外で補う(芋、かぼちゃ、南瓜の煮物なども主食の代わりになります)
ごはんでなくても構いません。 じゃがいも、里芋、かぼちゃ。やわらかく煮れば食べやすく、エネルギーも入ります。
やわらかい=安全ではありません
最後に、必ず書いておきたいことがあります。
餅は、絶対にやめてください。
やわらかいのに危険なものの代表です。喉に張りつき、詰まります。「小さく切れば大丈夫」とも言い切れません。噛む力と飲み込む力が落ちている方には、出さないでください。
同じ理由で注意が必要なもの。
- やわらかすぎるパン(上あごに張りつく)
- 団子、白玉
- こんにゃく(やわらかいが弾力があり、噛み切れない)
- 海苔(薄くて口の中で張りつきます)
やわらかさと、飲み込みやすさは別のものです。 これはやわらかくする5つの方法でも書いた話ですが、主食では特に効いてきます。
まとめ
ごはん
- まず水加減。軟飯から。いきなり粥にしない
- 粥が嫌がられるなら、出汁で炊く
- ばらけるなら、あん・卵とじ・丼もの
- お茶漬けは避ける。雑炊にする
パン
- 浸す、耳を落とす、蒸しパンに
- フレンチトーストは優秀
麺
- すすらせない。2〜3cmに切る
- 汁は別に。同時に口に入れない
- 煮込みうどんが最も向いています
共通
- 主食が減ると、全体量が大きく落ちる。量を見る
- ごはんでなくてもいい。芋やかぼちゃでも
- やわらかい=安全ではない。餅は出さない
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この記事を書いた人
調理師の資格が取れる高校を卒業後、看護師として病院に勤務。集中治療室(ICU)を経て、再び食の世界へ。医療と調理の両方の現場から、家庭でできる療養食のことを書いています。
看護師/調理師/食育インストラクター/野菜ソムリエ
