薬が飲みにくくなったとき

食事のことばかり考えていて、見落とされるのが薬です。

食べ物がやわらかくなっているのに、薬だけは、相変わらず硬い錠剤のまま。

口の中に残っている。飲み込めずに吐き出してしまう。水でむせる。

食事と同じくらい、ここは困りごとになります。

そして、家族が自己判断でやってしまいがちな対応の中に、危ないものがあります。 そこを先に書きます。

最初に ── 砕く前に、必ず聞いてください

いちばん大事なことです。

飲みにくいからといって、錠剤を砕いたり、カプセルを開けたりしないでください。自己判断では絶対にやらないでください。

理由があります。

薬の中には、「ゆっくり効くように作られているもの」があります。 少しずつ溶け出すように設計されているものです。

これを砕くと、その設計が壊れます。 一度に効いてしまうことがあります。

ほかにも、

  • 胃で溶けないようにコーティングされているもの
  • 苦みを包んでいるもの(砕くと飲めないほど苦くなります)
  • カプセルでなければ扱えないもの

見た目では分かりません。

聞く相手は、薬剤師です

処方した医師か、薬をもらっている薬局の薬剤師に聞いてください。

「飲み込みにくくなっているのですが、砕いても大丈夫ですか」

これだけで答えてもらえます。 遠慮する場面ではありません。

飲みにくい理由を、まず見てください

対応が変わります。

大きくて、飲み込みにくい

錠剤が大きい。数が多い。口の中でまとまらない。

→ 薬の形を変えられることがあります(後述)

口の中に残る、張りつく

口が乾いていると、錠剤が舌や上あごに張りついて動きません。

口を整える記事に書いたとおりです。口の中が乾いていると、薬も飲みにくくなります。

→ 先に口を湿らせてください

水でむせる

薬そのものではなく、一緒に飲む水でむせている場合です。

→ とろみ剤の選び方のとろみの話につながります。ただし注意があります(後述)

苦い、嫌がる

味が理由のことがあります。

→ 服薬ゼリーなどが使えます

飲んだつもりで、飲めていない

これが見落とされます。

口の中に残っていたり、あとから吐き出していたり。飲んだと思っていたのに、飲めていなかったということが起こります。

→ 飲んだあとに、口の中を確認してください

家庭でできる工夫

先に、口を湿らせる

ひと口だけ水を飲んでから、薬を飲む。

それだけで、張りつきにくくなります。口を整える記事と同じ考え方です。乾いた口に薬を入れない。

服薬ゼリーを使う

ドラッグストアで買えます。薬を包んで、つるんと飲み込めるようにするものです。

  • 薬を包むので、苦みが和らぎます
  • 水より飲み込みやすい形状です
  • 高齢の方向けの製品もあります

ただし、薬によっては相性があります。 使い始める前に、薬剤師に一言確認しておくと確実です。

飲む姿勢を作る

食事の姿勢の記事と同じです。あごを引いた姿勢で。

上を向いて薬を飲む方がいますが、飲み込む力が落ちている方には危ない飲み方です。 錠剤が気管のほうへ行きやすくなります。

あごを引いたまま、ゴクンと飲む。

一度に飲まない

薬が何種類もあると、まとめて口に入れてしまいがちです。

1〜2錠ずつ、分けてください。 口の中で散らばらず、まとまりやすくなります。

時間はかかりますが、確実に入るほうが大事です。

飲んだあと、口の中を見る

残っていないか確認してください。残ったまま横になると、危険です。

そして飲んだあとも、しばらく起きたままに。 食事の姿勢の記事の食後と同じです。

とろみをつけるときの注意

むせるから、ととろみをつけた水で薬を飲ませることがあります。

ここは注意してください。

とろみの濃さによっては、薬の溶け方に影響することがあると言われています。

つまり、よかれと思ってつけたとろみが、薬の効き方を変えてしまう可能性があるということです。

自己判断で決めないでください。

  • とろみが必要かどうか
  • どのくらいの濃さにするか
  • その薬でとろみを使っていいか

この3つを、医師か薬剤師、または訪問看護に確認してください。

服薬ゼリーを勧められることもありますし、薬の形そのものを変えてもらえることもあります。 次の話です。

薬の形は、変えられることがあります

ここを知らない方が多いです。

同じ成分でも、いくつかの形があることがあります。

  • 錠剤
  • 口の中で溶けるタイプ(水がなくても飲めるもの)
  • 粉薬(ただし、粉が必ずしも飲みやすいとは限りません。後述します)
  • 液体(シロップ)
  • 貼り薬
  • 小さい錠剤に変える

「飲みにくい」と伝えれば、検討してもらえることがあります。

そして、薬が多すぎる場合は、整理してもらえることもあります。 飲む回数をまとめる、必要性を見直す、といった調整です。

これは医師の判断ですが、伝えなければ始まりません。

伝え方

形態は誰が決めるのかの記事と同じで、具体的に伝えてください。

伝わりにくい伝わる
「薬が飲みにくいです」「大きい錠剤だけ、口に残ります」
「飲んでくれません」「粉薬は飲めますが、カプセルは吐き出します」
「むせます」「薬を飲むときの水でむせます。食事ではむせません」

何が、どう飲みにくいのか。 これが伝われば、対応が出てきます。

病棟でやっていたこと

粉薬は、意外と飲みにくいです

ここは、多くの方の思い込みと逆かもしれません。

「錠剤が飲めないなら、粉にすればいい」と考えがちですが、粉薬は粉薬で、飲みにくいものです。

病棟で見ていて、粉薬が口の中に張りついて残っている方は、かなり多くいました。

  • 舌や上あご、頬の内側に張りつく
  • 口の中が乾いていると、なおさら残る(口を整える記事)
  • 粉が飛んで、むせることもあります

飲めたように見えて、口の中に残っている。 これが粉薬の落とし穴です。

水に溶かして飲んでもらっていました

溶かしてよい薬であれば、水に溶かして飲んでいただいていました。

そのほうが、張りつかずに入っていきます。

ただし、溶かしていいかどうかは、薬によります。 水に溶かすと性質が変わるものや、溶かすと飲めないほど苦くなるものがあります。

ここも、薬剤師に一言確認してください。 「水に溶かして飲ませてもいいですか」と聞けば、すぐ答えてもらえます。

粉薬から、錠剤に戻してもらうこともありました

ここがいちばんお伝えしたいことです。

飲みにくい、口に残る。そういうときに、医師に相談して、粉薬から錠剤に戻してもらうことがありました。

世の中では「飲みにくい → 粉にする」と考えられていますが、現場では逆に戻すこともあるわけです。

その人にとって飲みやすい形は、実際に飲んでもらわないと分かりません。

だから、前の節に書いたことをもう一度書きます。「飲みにくい」と伝えてください。 錠剤から粉へ、粉から錠剤へ、どちらの方向にも変わることがあります。

薬の種類が多い方こそ、一つずつ

高齢の方は、持病をいくつか持っておられることが多く、薬の種類もそれだけ多くなります。

朝だけで5種類、6種類ということも珍しくありません。

そういう方ほど、一つずつ確実に飲んでもらっていました。

まとめて渡さない

一度に全部を手渡すと、口の中で散らばります。 そして、どれが飲めてどれが残ったのか分からなくなります。

一つ渡して、飲み込んだのを確認してから、次を渡す。

退院後1週間の記事に書いた食事のひとさじと、まったく同じ考え方です。

粉薬が数種類あるときも、一つずつ

これも一つずつ手渡していました。

粉薬をまとめて飲むと、量が多くなって口の中に残りやすく、むせることもあります。

面倒に見えますが、確実に入るほうが大事です。

家庭でも、同じようにしてください

  • 一つずつ渡す。 飲み込んだのを確認してから次
  • 粉薬が残っていないか、口の中を見る
  • 溶かしていいか、薬剤師に確認する
  • 飲みにくければ、形を変えられないか相談する(粉へでも、錠剤へでも)

薬の数が多い方ほど、時間はかかります。 でも、飲めていない薬があるより、ずっといいです。

お薬手帳を持っていってください

食事のことで相談するときも、お薬手帳があると話が早くなります。

飲んでいる薬が分かると、

  • 口が乾く作用があるかどうか(口を整える記事)
  • 食欲に関わるものがあるかどうか
  • 飲み合わせ

こうしたことが分かります。

ケアマネジャーや訪問看護に相談するときも、見せられるようにしておいてください。

まとめ

  • 砕く・カプセルを開ける前に、必ず薬剤師か医師に聞く。 見た目では分かりません
  • 飲みにくい理由を見る(大きさ/口の乾き/水でむせる/味/飲めていない)
  • 先に口を湿らせる。 乾いた口に薬を入れない
  • 服薬ゼリーが使えます。使う前に一言確認を
  • あごを引いて飲む。 上を向かない
  • 1〜2錠ずつ、分けて
  • 飲んだあと、口の中を確認する
  • とろみで薬を飲ませるのは、自己判断しない
  • 薬の形は変えられることがあります。 伝えなければ始まりません
  • 粉薬は、意外と飲みにくい。 口の中に張りついて残ります
  • 溶かしてよい薬なら、水に溶かすと入りやすくなります(要確認)
  • 粉薬から錠剤に戻すこともあります。 「飲みにくい → 粉」とは限りません
  • 種類が多い方こそ、一つずつ渡す。 粉薬も一つずつ

食事の形態を変えたなら、薬のことも一度相談してください。 セットの問題です。

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この記事を書いた人

調理師の資格が取れる高校を卒業後、看護師として病院に勤務。集中治療室(ICU)を経て、再び食の世界へ。医療と調理の両方の現場から、家庭でできる療養食のことを書いています。

看護師/調理師/食育インストラクター/野菜ソムリエ

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