スーパーの介護食コーナー、あるいはドラッグストアの棚の前。
種類が多すぎて、何が違うのか分からない。
「やわらか」「なめらか」「かまなくてよい」。似たような言葉が並んでいますが、この言葉には基準があります。 それを知っているかどうかで、選ぶ時間が変わります。
この記事では、パッケージのどこを見れば、その商品が誰向けか分かるかを書きます。
なお、宅配サービスの選び方は別の記事にまとめています。ここで扱うのは、自分で買ってきて、家に置いておけるものです。
まず覚えるのは、これだけ ── UDF区分
介護食のパッケージに、「ユニバーサルデザインフード」というマークがついていることがあります。略してUDFです。
これは、日本介護食品協議会という団体が定めた規格で、かたさと飲み込みやすさで4段階に分かれています。
| 区分 | 目安 |
|---|---|
| 容易にかめる | かたいものや大きいものは食べづらい |
| 歯ぐきでつぶせる | かたいものや大きいものは食べづらい/ものによっては飲み込みづらい |
| 舌でつぶせる | 細かくてやわらかければ食べられる/水やお茶が飲み込みづらいことがある |
| かまなくてよい | 固形物は小さくても食べづらい/水やお茶が飲み込みづらい |
上から下へ行くほど、やわらかくなります。
この4段階を覚えておく意味
病院や施設で言われた食事の形態を、市販品に置き換えるときの手がかりになります。
「きざみ食」「一口大」といった病院の呼び方は、病院ごとに違います。 全国共通ではありません。
でもUDFは規格なので、メーカーが違っても同じ区分なら、おおよそ同じかたさです。 ここが便利なところです。
ただし、そのまま鵜呑みにしないでください
大事な注意があります。
UDFは「かたさ」の規格であって、その人に合うかどうかの判定ではありません。
同じ「歯ぐきでつぶせる」でも、口の中でまとまりやすいものと、ばらけるものがあります。ばらけるものは、その人にとって食べにくいことがあります。
区分は出発点です。最後は、実際に食べてもらって様子を見てください。
もうひとつの表示 ── スマイルケア食
農林水産省が定めた「スマイルケア食」という表示もあります。3色のマークで分かれています。
- 青マーク:噛むこと・飲み込むことに問題はないが、栄養補給が必要な方向け
- 黄マーク:噛むことが難しい方向け(数字が小さいほどやわらかい)
- 赤マーク:飲み込むことが難しい方向け
UDFとの違いは、「噛む」と「飲み込む」を分けていることです。
ここが実は重要です。最初に見るべき3つのことで書いたとおり、噛めないことと、飲み込めないことは別の問題です。赤マークは、飲み込みに配慮した商品につきます。
ただし、表示がついていない商品も多くあります。 マークがないから悪い商品、ということではありません。
パッケージで、ほかに見るところ
区分の次に見てほしいのが、この3つです。
1. 量
介護食のレトルトは、1食分が小さいものが多いです。
普通のレトルト食品のつもりで買うと、「これだけ?」と思う量のことがあります。逆に、食が細くなっている方にはちょうどいい量です。
1袋何グラムかを見てください。 100g前後のものが多いです。
2. 温め方
- 湯せん
- 電子レンジ対応
- そのまま食べられる
毎日のことなので、ここは大きいです。 電子レンジ対応なら、袋のまま温められるものもあります。
介護する側が忙しい時間帯に使うなら、手間の少ないものを選んでください。
3. 塩分
塩分の指示が出ている場合は、必ず見てください。
介護食は、食べやすさを優先して味をはっきりつけているものもあります。 やわらかいから薄味、とは限りません。
種類別の使い分け
レトルトのおかず
いちばん種類が多い区分です。煮物、魚、肉、丼の具など。
常温で保存できるので、買い置きに向いています。 冷凍庫を圧迫しないのも利点です。
使い方のコツがあります。そのまま出すのではなく、器に移してください。
パッケージのまま出すと、どうしても「買ってきたもの」に見えます。器に移して、青菜を少し添えるだけで、食卓の見え方が変わります。1日の献立の記事の副菜の位置に入れる、と考えてください。
ミキサー食・ペースト状のもの
かまなくてよい区分の主力です。
手作りがいちばん大変な区分なので、市販品を使う価値が高い部分です。ミキサーを出して、洗って、という手間がなくなります。
とろみ調整食品
とろみ剤の記事で詳しく書いています。
商品によって、粉の量の目安が違います。 病院で使っていたものと同じ商品を選ぶのが確実です。
栄養を補うもの(ドリンク、ゼリー)
少量でエネルギーが摂れるように作られたものです。ドラッグストアで買えます。
ただし、これを主食の代わりにするかどうかは、自己判断で決めないでください。 食事が摂れていない状態が続いているなら、まず相談です。
「食が細くなってきたから、とりあえずこれで」という使い方は、足りていない状態を見えにくくすることがあります。
主食(お粥、やわらかごはん、パン粥)
レトルトのお粥は種類が豊富です。白粥だけでなく、味つきのものもあります。
ごはん・パン・麺の記事で書いたとおり、白粥は味がぼんやりします。出汁の味がついたものを選ぶ、あるいは白粥に具を足すほうが食べてもらえます。
どこで買うか
ドラッグストア
とろみ剤と栄養補助食品は、ここがいちばん探しやすいです。介護用品コーナーがある店舗なら、レトルトも置いています。
スーパー
店舗によります。介護食コーナーがある店は、品揃えが安定しています。
ネット通販
種類がいちばん多く、まとめ買いもできます。 重いものを運ばなくていいのは大きな利点です。
ただし、最初の1回はできれば実店舗で買ってください。 実物のかたさや量を見てからのほうが、失敗が少なくなります。
介護用品店・福祉用具の店
相談しながら選べます。 ケアマネジャーに聞けば、近くの店を教えてもらえることがあります。
買い方のコツ
いきなり箱買いしない
これが最大の失敗です。
「安いから」とまとめ買いして、口に合わなかった。そのまま何十食分も残る。 よくある話です。
まず1〜2個ずつ、違うメーカーのものを買ってください。 食べてもらって、合うものが分かってから、まとめ買いに進んでください。
メーカーを揃えすぎない
同じメーカーばかりだと、味の傾向が似てきます。 飽きます。
2〜3社を混ぜておくと、味に幅が出ます。
全部を市販品にしない
一品でも手作りが入ると、食卓の印象が変わります。
味噌汁だけは作る、副菜だけは作る。それだけで十分です。 退院後1週間の記事でも書きましたが、全部を手作りする前提にしないでください。続きません。
「非常用」として置いておく
これがいちばん大事な使い方かもしれません。
作る人が体調を崩した日。 急に用事が入った日。疲れて動けない日。
そういう日のために、常温保存できるレトルトを何食分か置いておいてください。
これがあるかないかで、介護する側の追い詰められ方が変わります。
正直に書いておきます ── 私は市販品を扱っていませんでした
ここまで選び方を書いてきましたが、ひとつお伝えしておくことがあります。
病院では、市販の介護食を使っていませんでした。 病院で作った食事を、そのまま召し上がっていただいていました。
ですから私には、「この商品を現場で使っていて、よかった」という経験がありません。
この記事に書いたのは、規格の読み方と、調理の目から見た選び方の考え方です。特定の商品を勧めてはいません。
実際に自分で買って食べたものについては、別の記事に書きます。 食べていないものの味を書くことは、しません。
ただ、毎食見ていたから分かることはあります
病棟では、その人に合った形態の食事が、毎食運ばれてきました。それを実際に食べていただく場面を、毎日見ていました。
そこで分かったことは、市販品を選ぶときにも、そのまま当てはまります。
- 同じ形態でも、まとまるものとばらけるものがある
- 温度で、食べ方が変わる(「味がしない」の記事)
- 見た目で、手が出るかどうかが変わる
- 量が多いと、最初から食べる気が失せる(退院後1週間の記事で「小さめの器を」と書いたのは、これが理由です)
パッケージの区分は、かたさしか教えてくれません。
でも実際に食べてもらうときに効いてくるのは、まとまるか、温かいか、見た目はどうか、量は適当かです。
そこは、買う側が見るしかありません。 だから「1〜2個ずつ試す」と書きました。
やってしまいがちなこと
パッケージの区分だけで決める
区分は目安です。ばらけやすさや、口に残りやすさまでは分かりません。
「介護食」と書いてあるから安心する
やわらかさと、飲み込みやすさは別です。 ごはん・パン・麺の記事で書いたとおり、やわらかくても喉に張りつくものがあります。
温めずに出す
「味がしない」の記事で書いたとおり、冷めたものは味を感じにくくなります。 表示どおりに温めてください。
本人の前で袋を開ける
小さなことですが、効きます。先に器に移しておいてください。
まとめ
- UDFの4区分を覚える(容易にかめる/歯ぐきでつぶせる/舌でつぶせる/かまなくてよい)
- スマイルケア食は、噛むと飲み込むを分けている(黄=噛む、赤=飲み込む)
- 区分は出発点。 最後は実際に食べてもらって判断を
- 量・温め方・塩分も見る
- いきなり箱買いしない。 1〜2個ずつ試す
- 器に移す。 それだけで食卓が変わる
- 全部を市販品にしない。 一品でも手作りを
- 「動けない日」のための買い置きを、必ず用意しておく
そして、この記事では特定の商品を勧めていません。 実際に買って食べたものについては、別の記事に書きます。
市販品は、手を抜くための道具ではありません。続けるための道具です。
なお、この表示が実物とどれだけ合っているかを、実際に買って食べて確かめました。「舌でつぶせる」と「歯ぐきでつぶせる」── 一段階違うと、実物はどう違うのかに書いています。
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この記事を書いた人
調理師の資格が取れる高校を卒業後、看護師として病院に勤務。集中治療室(ICU)を経て、再び食の世界へ。医療と調理の両方の現場から、家庭でできる療養食のことを書いています。
看護師/調理師/食育インストラクター/野菜ソムリエ
